第265章 【265】私はあなたに彼を手ずから殺させる1

この瞬間の帝様は、再び残酷で冷酷な本質を取り戻していた。

この間、彼が若奥様にしたすべてのことは、まるで幻のようだった。

南条陽凌は、本来冷血であるべきだった。

しかし夏野暖香に出会ったことで、一夜にして情熱的で狂気じみた男に変わった。

まるで思春期の少年のように。

藤田抑子は心の中で溜息をついた。一方では夏野暖香と橋本健太を心配しながらも、

同時に、心の中では信じられない思いでいっぱいだった。

もしこのことが綾瀬さんの耳に入れば、また大きな波紋を呼ぶだろう。

すべてが混乱してしまった!

「橋本健太に電話をかけろ」南条陽凌はゆっくりと口を開き、下げた手を軽く握りしめた。

骨の関節がぶつかる音が、はっきりと耳に届いた。

藤田抑子の目に複雑な色が浮かび、携帯電話を取り上げた。

1分後。

「帝様……橋本さんの電話は……話し中です」藤田抑子の声は震え始めていた。

「人を派遣して捜せ」

「はい、帝様、すぐに行きます!」

「いや……今回は、私もお前たちと一緒に行く……」ついに、南条陽凌は歯の隙間から、これらの言葉を絞り出した。

……

「ゴロゴロ……」

「ゴロゴロ……」

午前3時、夏野暖香が眠りの中にいると、突然大きな音が聞こえてきた。

一瞬呆然とした後、スミス夫人の驚きの叫び声が聞こえた。

「あらまあ……地震よ!早く起きて、地震よ!」スミス夫人はドアを力強く叩いていた。

窓の外は灰色がかった青い空で、室内はまだはっきりと見えなかった。

夏野暖香と橋本健太はすぐに起き上がり、二人は素早くベッドから飛び出した。

地震?まさか?

音はますます大きくなり、家全体が揺れているように感じられ、確かに地震のようだった。

しかも非常に恐ろしく感じた。

スミス夫人は大きな盆を頭の上に持ち、さらに二つの小さな盆をそれぞれ橋本健太と夏野暖香に渡し、ドアを開けて外に飛び出した。

夏野暖香と橋本健太はお互いを見つめ、橋本健太は言った。「見てくる」

一歩踏み出したところで、スミス夫人が再び盆を持って飛び込んできて、急いでドアを閉めるのが見えた。

「オーマイゴッド!外にはたくさんのテロリストが来たわ、どうしたらいいの?夢を見ているんじゃないわよね!」スミス夫人はそう言いながら、ぺちゃくちゃと聞き取れない英語をたくさん話した。