芸子は寝室の床の破片を掃除道具で掃除していると、ドアが押し開かれた。
入ってきた夏野正南を見て、思わず驚いた。
「旦…旦那様」芸子は少し緊張して呼びかけた。
夏野正南は眉間にしわを寄せ、少し沈んだ表情で芸子を見た。「何度も言っているだろう、鳳様の前では、心子に対してあまり緊張するなと!」
「わ…わかっています!」
「心子が帰ってきたばかりなのに、すぐに後をついて来るとは、彼女が疑いを持ったらどうする?私の義父はまだ病院にいるんだ。今何か問題が起きれば、これまでの何年もの努力が無駄になってしまう!」
「わ…わかっています、ごめんなさい、旦那様…」芸子は夏野正南を見つめ、小声で言った。
夏野正南は芸子の姿を見た。40代とはいえ、まだ色気が残っていた。特に彼の前で臆病で従順な様子は、彼を満足させた。
これは彼が夏野夫人の前では得られない感覚だった。
夏野夫人は何をするにも自分で決め、時には彼の考えなど全く気にしなかった。
夏野正南の疲れた目に熱が宿り、ゆっくりと芸子の前に歩み寄った。
彼女の手首を掴み、「芸子…この数年、辛い思いをさせたな…」
芸子は全身が硬直し、手の箒が「パン」と床に落ちた。
「わ…夫人が…」
「安心しろ、彼女は今薔子に構っている。今夜は、お前だけのものだ!」夏野正南はそう言うと、芸子を壁に押し付けた。
……
朝方、一筋の光がホテルの床から天井までの窓のカーテンを通り抜け、シモンズのベッドに落ちた。
夏野暖香は重い頭を擦りながら、ゆっくりと目を開けた。
そして、すぐ近くにある南条陽凌のハンサムな顔を見た。
夏野暖香はハッとした。
昨夜の出来事が次々と思い出された。
そして今、彼女は一糸まとわぬ姿で南条陽凌に抱かれていた。
思わず、耳元が熱くなった。
目の前の男をにらみつけた。南条陽凌、あなたは本当に獣だわ!
夏野暖香は南条陽凌の束縛から逃れようとしたが、結局南条陽凌は起こされてしまった。
「どこに行くんだ?」南条陽凌は彼女の腕をつかみ、むっつりと尋ねた。
「離して、トイレに行くの!」
「行かせない」南条陽凌は夏野暖香の腕をつかみ、体を翻して彼女を押さえつけた。
「夏野暖香…」
「本当に急いでるの!」夏野暖香は怒って南条陽凌を睨みつけた。
「俺に子供を産め」南条陽凌が突然言った。