第315章 【315】あなたは私が香るかどうか嗅いでみて1

「うぅ……あなたは悪い人……」夏野暖香は少し息を切らしながら、手を伸ばして南条陽凌の耳をつかんだ。

「バカ女……」南条陽凌は彼女に引っ張られて痛み、眉をひそめながら身をかがめ、彼女を肩に担いだ。

綾瀬さんをお願いします。

「はい、帝様……」二人のボディガードは暴れ回る南条慶悟を抱え上げた。顔は引っかき傷だらけで、苦い表情で南条陽凌の後ろについてレストランを出た。

……

フェラーリのスポーツカー。

運転手は小走りで恭しくドアを開けた。

南条陽凌は身をかがめ、夏野暖香を車内に置き、自分も滑り込んだ。

夏野暖香はふらふらと揺れ、バランスを崩して「ドン！」と頭をドアにぶつけた。

「うぅ……」

悔しそうに痛みの声を漏らした。

南条陽凌はすぐに夏野暖香を引き寄せ、手を伸ばして彼女の額をさすった。「バカな女、誰がそんなに飲めと言った？痛くないか？」

夏野暖香は小さな顔をしかめながら、目を閉じたまま南条陽凌にしばらくさすらせた後、ようやくぼんやりした目を開いた。

目の前のハンサムな顔を見て、夏野暖香は手を伸ばし、男の頬を包み込んだ。

「あれ……イケメン、私たち、どこかで会ったことある？」夏野暖香は南条陽凌を見つめながら、間抜けな笑みを浮かべて言った。

「ああ、会っただけじゃなく、かなり親しいんだ！」南条陽凌は顔を黒くして言った。

夏野暖香はわかったようなわからないような顔で頷いた。

男が話すときのセクシーな薄い唇を見て、思わず唾を飲み込んだ。

「イケメン……あなた美味しそう……」夏野暖香はそう言いながら、頭を下げて南条陽凌の唇にキスしようとした。

南条陽凌は顔を半分黒くし、いらだたしげに顔をそらし、彼女の肩を揺さぶった。「夏野暖香、少しは正気に戻れ！」

夏野暖香はキスできなかったことに怒りを覚えた。

美しい眉を高く上げ、両手で南条陽凌の頭を抱え、再び彼の唇にキスしようとした。

「離れろ、臭いぞ！」南条陽凌は再び顔をそらし、わざとそう言って、夏野暖香の思い通りにさせなかった。

夏野暖香は彼のあごにキスし、髭が刺さって痛みの声を上げた。

「うぅ……」臭い……

少女は首を傾げて考え、不思議そうに言った。「あなた……さっきは私にキスしてたじゃない？どうして私が臭いと思わなかったの？」

南条陽凌の唇の端が痙攣した。