第324章 【324】もう私を探さないで3

だから、彼はまだ彼女に微笑みかけ、会話し、さらには彼女の会う誘いを受け入れるだろう。

しかし、人と人との間の感情は、本当に微妙なものだ。

時には、一言も話さず、一言も言わなくても、相手があなたを好きか嫌いか、一目見ただけで、一つの動作、さらには一つの呼吸でさえ、感じ取ることができる。

夏野暖香がテーブルの上に置いていた手を、少しずつテーブルの下に移した。

両手で、自分の服の裾をしっかりと掴み、指先の一つ一つが震えていた。

「私……私……」暖香ちゃんは口を開こうとしたが、喉がすでに詰まっていることに気づいた。

橋本健太は彼女を見つめ、軽く息を吸った。

目には、複雑さと忍びない思いが過ぎった。

しかし、それでも冷淡に言った。「他に用がなければ、私は先に行くよ。そして今後は、特別な用事がない限り、私を訪ねてこないでくれるかな。」

橋本健太はそう言いながら、ピンク色の紙幣を二枚取り出し、ティーカップの下に置いた。

暖香ちゃんの目の前はぼやけていた。彼女は彼の目を見る勇気がなく、視線が届くのは、彼のスーツの下から二番目のボタンと、財布からお金を取り出す彼の長い指の動きだけだった。

心は激しく震え、目の前のその長身の姿が立ち上がり、去っていくのを見ていた。

一瞬のためらいもなく。

暖香ちゃんは必死に自分を落ち着かせようとした。落ち着け、落ち着け。

しかし、その姿が自分の横を通り過ぎようとした時、彼女はやはり我慢できず、突然立ち上がり、彼の腕をつかんだ。

……

カフェの外。

長い間座って不機嫌そうな顔をしていた松本紫乃は、目の前の光景を見て、思わず目を輝かせた。

唇の端に得意げで陰険な笑みを浮かべた。

携帯を持ち上げ、カフェ内の二人に向けて、撮り始めた。

……

「南……南……」暖香ちゃんの口が開いたり閉じたりし、ほとんど制御できずに、その名前を呼びそうになった。

「まだ、何か用があるのか？」健太は頭を下げ、冷淡な声で、辛抱強く尋ねた。

暖香ちゃんは目を上げると、相手の目には複雑さと深い困惑が浮かんでいた。

「あなたは……私のことをとても恨んでいるの？」彼女は涙を浮かべながら尋ねた。「前回のことで、私は……」