第335章 【335】あなたはなぜ私を救ったのか5

空気が一瞬の沈黙に包まれた。

もし視線が人を殺せるなら、夏野暖香はきっと佐藤陽介に撃ち抜かれてしまっていただろう！

数秒後、彼は真剣に自分の傷に薬を塗っている彼女を見つめ、冷たく言った。「無駄だ……俺は毒に侵されている。本当に俺を救いたいなら、すぐに解毒剤をよこせ！」

「さっきまで私を殺すと言っていた人に、解毒剤をあげると思う？」夏野暖香は彼を睨みつけた。この男はまったく理解できない。こんな状態なのに、まだ高慢な態度を取っている。

この傲慢な性格は、南条陽凌とよく似ている！

ただ、彼の目に宿る殺気は、南条陽凌よりもさらに深いものだった！

佐藤陽介：「……」

「お前という女は……！お前は……」佐藤陽介は怒りで言葉に詰まった。

「南条陽凌も傲慢な人物だが、どうしてお前のような女を娶ったんだ？」しばらくして、怒りで内傷を負いそうな佐藤陽介は、やっと歯の間から絞り出すようにそう言った。

夏野暖香はピンセットとアルコールで彼の傷口を消毒していたが、その言葉を聞いて、手に力が入った。

佐藤陽介の体が震え、彼女を睨みつけ、表情は極限まで険しくなった。

夏野暖香は顔を上げて彼を見た。彼女も南条陽凌がなぜ自分を娶ったのか賛同していなかった！もし彼が夏野暖香を娶っていなければ、今頃彼女はこんなに心を砕いて彼の側にいる必要もなかっただろう！

しかし、佐藤陽介の軽蔑的な口調に、瞬時に怒りが湧いた。

「何が言いたいの？私を娶ったことがどうしたの？私じゃなくて、あなたを娶うべきだったとでも言うの？！！」

彼を娶う？

ある光景を思い浮かべ、佐藤陽介の顔が暗くなった……

「お前という女は……げほっ……」彼は夏野暖香に半ば殺されそうなほど腹を立て、傷の痛みも加わり、喉から一口の鮮血を吐き出した。

夏野暖香の表情が変わった。「ねえ……大丈夫？」

「離れろ！」佐藤陽介は苛立ちながら叫び、苦しそうに目を閉じ、彼女を見るのも面倒だった。

彼は今日このまま死んでしまっても、もうこの忌々しい女にこれ以上腹を立てたくないと思った！

夏野暖香：「……」

彼がどんどん弱っていくのを見て、夏野暖香も焦り始めた。

彼女には解毒剤がなく、このままでは一時間もしないうちに毒が彼の全身に回ってしまうかもしれない。そうなれば、彼は本当に助からなくなる！