第336章 【336】もう少し我慢して1

「本……本当に？」少女の口にはまだ血が付いていて、整った小さな顔は光の下で透き通るように白く、澄んだ大きな瞳には隠しきれない動揺の色が浮かんでいた。

この状況では、彼は本来苦しんでいるはずだったが、なぜか夏野暖香の姿を見ていると、佐藤陽介はどこか可愛らしく感じてしまった。

彼は思わず笑みを浮かべ、軽くうなずいた。「本当だよ！」だから……彼らは他人同士、自分を傷つけることになると知っていたら、彼女はきっと彼を助けようとはしなかっただろう！

しかしこの点については、佐藤陽介も理解できた。

なぜなら彼自身も、自分を犠牲にしてまで見知らぬ人を助けるようなことは絶対にしないだろうから！

だから、今夏野暖香が彼を見捨てることを選んでも、彼は何も驚かないだろう。

夏野暖香は澄んだ大きな瞳をパチパチさせ、顔をしかめて尋ねた。「じゃあ……どうしよう？」話している間も、口からは血が滴り落ちていた。

佐藤陽介の目尻の神経がピクリと動いた。「一口だけ吸っただけだから、あとでお酒で口をすすげば、大丈夫なはずだ。」

「でも……あなたは……どうするの？」

「……」

「もう、面倒くさい！気にしない！どうせ吸っちゃったんだし、死ぬなら死ぬわ！」夏野暖香は少し考えてから、突然イライラした様子で言い、次の瞬間、彼の胸をつかんで頭を下げ、彼の傷口に再び吸い付いた。

佐藤陽介：……

この女性は、本当に馬鹿なのか、それとも演技なのか？

命知らずか？！

しかし彼の驚きと信じられない目の前で、夏野暖香はそのように何度も彼の傷口から毒血を吸い出していった！

一口吸うごとに、喉に感じる甘い生臭さに吐き気を催しそうになりながらも、彼女は必死に耐え、毒の入った黒い血を吸い出しては吐き出した。

何度も何度も。

柔らかな唇が何度も彼の傷口に触れ、吐き出す血が鮮やかな赤色に変わるまで、夏野暖香はやめなかった。

佐藤陽介がどんどん弱っていくのを見て、他のことは気にせず、彼の傷口を拭き取り、急いで止血した。そして薬箱から止血薬を取り出して塗ってあげた。

それから少し不器用ながらも彼の傷口を包帯で巻いた。

全て終わった頃には、夏野暖香の額には細かい汗が浮かんでいた。