夏野薔子は声を聞いて、目に涙を浮かべた。
夏野暖香の腕をつかみ、ドサッと音を立てて跪いた。
「何をしているの?」夏野暖香は叫んだ。
「暖香ちゃん……すべては姉さんの過ちよ……姉さんは一時的に心を迷わせてしまったの。ずっと皇太子様を好きだったわ。本来は私が皇太子様と結婚するはずだったのに、後になって婚約が破棄されて、皇太子様はあなたと結婚したわ!
私は納得できなくて、だから皇太子様と一緒になれると妄想していたの!でも今日、橋本真珠にチャンスを奪われるなんて思ってもみなかった!
暖香ちゃん、私はもうすぐ去るわ。去った後は、二度と戻ってこないつもりだった。
でも彼のことが忘れられなくて……だから……自分に何か思い出を残したくて、こんな愚かなことをしてしまったの!
暖香ちゃん……ごめんなさい、どうか許して、皇太子様には言わないで。そうでなければ、私は終わりよ……」
夏野暖香は夏野薔子の言葉を聞いて、非常に驚いた。
「あなたの言っていることは……本当なの?」
「間違いないわ!」夏野薔子は泣きながら言った。「信じられないなら、両親に聞いてみて……暖香ちゃん、皇太子様はとても素晴らしい人だから、私が彼を好きになるのも当然でしょう?暖香ちゃん……ごめんなさい、数日後には去るわ、二度と戻ってこないから、あなたと皇太子様の邪魔はしないわ……どうか許して……」
「まず立ちなさい!」夏野暖香は頭が大きくなるような感覚を覚えた。元々南条陽凌が娶ろうとしていたのは夏野薔子だったの?でもなぜ最終的に夏野暖香を選んだのだろう?
彼女の知る限り、南条陽凌は以前の夏野暖香に対して、全く感情を持っていなかったはずだ!
夏野薔子は立ち上がり、夏野暖香を見つめた。「暖香ちゃん……すべては私の過ちよ!もし本当に許せないなら、私が皇太子様に言いに行くわ!
あなたたちの仲が良いから、皇太子様はあなたを責めないと思って……だから一時的に判断を誤ったの、ごめんなさい!姉さんはあなたに申し訳ないことをしたわ!」
夏野暖香は苦々しく言った。「もうこうなってしまったのだから、何を言っても無駄よ。彼は私を信じていないし、説明したところで何の意味があるの?」