第375章 あなたは私の女5

南条飛鴻がそちらで叫んだ。「キスして！キスして！」

すると、他の人たちも一緒にはやし立て始めた。

夏野暖香と南条陽凌は同時に固まった。

視線は、前で見つめ合っている男女に向けられた。

夏野暖香の目に一筋の痛みが走り、下唇を強く噛みしめた。

南条陽凌の瞳孔は縮み、水の入ったグラスを握る手は、きつく拳を握り、指先の関節が少しずつ白くなっていった。

みんなのはやし立てる声の中、橋本健太と蒋田雪はついにキスをした。

夏野暖香は南条陽凌に言った。「トイレに行ってくる。」

そう言って、立ち上がろうとした。

しかし南条陽凌にぐっと引き止められた。

体ごと椅子に倒れ込んだ。

「何するの？」

「座れ！」南条陽凌は命令した。

二人のキスはとても短く、橋本健太は蒋田雪から離れ、みんなに向かって微笑んだ。

視線は、夏野暖香の顔に落ちた。

一瞬のことだった。

そちらでは、久我悠輝が言った。「帝様、あなたと暖香ちゃんもキスしてよ！」

夏野暖香は眉をひそめた。

南条陽凌の陰鬱な視線が、冷たく彼女を見た。

久我悠輝は顔色を変えた。

急いで笑いながら言った。「ハハ...それなら、雰囲気もいいし...私と峰もキスしましょうか...」

そう言って、隣にいた後藤峰を引っ張り、倒れ込んだ...

夏野暖香は顔中に黒い線が走った。

数人は歌を選び続け、その間、蒋田雪はトイレに行った。

南条陽凌の携帯が鳴り、ドアの外に出た。

南条飛鴻は歌っていて、久我悠輝と後藤峰の二人は寄り添って自分たちだけで楽しんでいた。

ソファには夏野暖香と橋本健太だけが座っていた。

橋本健太はシャンパンを夏野暖香に渡し、目に複雑な色を浮かべて言った。「暖香ちゃん...一つ聞いてもいいかな？」

夏野暖香はシャンパンを受け取り、彼が何を聞こうとしているか分かっていながらも笑って言った。「何？」

「あの...あの童謡、<ブラのおもちゃ>はどこで...習ったの？」

彼の目に期待と複雑さを見て、夏野暖香の心は激しく痛んだが、彼の視線に応えて言った。「それは昔...児童養護施設にいた時に、ある男の子から習ったの...」

「男の子？」橋本健太は眉間にしわを寄せた。「彼は...何て名前だった？」

夏野暖香は頭を下げた。

突然、彼の視線に向き合う勇気がなくなった。