【374】あなたは私の女4

「ははは……捕まらないよ、南條漠真はバカだね!」

少女の銀の鈴のような笑い声は、透明な天の音のようだった。

実は南條漠真は彼女を簡単に捕まえることができたのに、わざと少し距離を置いて捕まえられないふりをしていた。それはただ少女の心から溢れる甘い笑顔を見るためだった。

何年経っても、少女の微笑みは彼の耳に残り続け、消えることはなかった!

「かわいい小さなカボチャ、傘を差してあげるね

黒い犬が私の人形をくわえて行っちゃった

猫ちゃんが私の消しゴムを見つけてくれた……」

夏野暖香がこの一節を歌ったとき、橋本健太は突然体を震わせ、無意識に立ち上がった。

七々……七々だ……

毎回、この一節を間違えて歌って、その後も直さなかった。

猫を黒い犬と歌っていた……

橋本健太の目が少し赤くなり、信じられないという表情で夏野暖香の姿を見つめた。

そのとき、耳元で優しい声が聞こえた。

「健太……どうしたの?」蒋田雪も立ち上がり、橋本健太を見て尋ねた。

視線は夏野暖香に落ち、目には一筋の暗い色が閃いた。

南条陽凌と他の人たちは一瞬驚いた。

南条陽凌は橋本健太を見つめた。

「健太、私たちの暖香ちゃんの歌が良すぎたのかな?」唇の端に遊び心を浮かべながらも、その口調には微かな疑念が漂っていた!

橋本健太は我に返った。

南条陽凌を見て、顔に微笑みを浮かべた。

「そうだね……確かに素晴らしい歌だった……」そう言いながら、手を伸ばして拍手した。

南条飛鴻:……

久我悠輝:……

後藤峰も拍手に加わった:「暖香さんの歌、本当に素晴らしかったです!」

夏野暖香は歌うのをやめ、橋本健太を見た。

やはり、彼女はこの歌を覚えていた。

鼻先の痛みをこらえながら、笑って言った:「上手くないよ、歌詞もこの数行しか覚えていないし……」

そう言いながら、視線を蒋田雪に向けた。

蒋田雪も彼女を見ていることに気づき、顔には笑みを浮かべていた。

しかし目には、かすかな敵意が宿っていた。

夏野暖香は下げていた片手を握りしめた。やはり、少し試しただけで、狐の尻尾が見えてしまったようだ……

「健太、暖香ちゃんがこんなに上手に歌ったわ。私たちも一曲歌ってみない?」そのとき、蒋田雪が突然口を開いた。

そして、<クリスタル>という曲を選んだ。