一番重要なのは……彼の手には、花束を持っていたことだ!
夏野暖香は小さな心臓が高鳴るのを抑えられなかった。
まるで夢を見ているような気分だった。
南条飛鴻は夏野暖香がベッドに横たわっているのを見て、すぐに駆け寄った。
「暖香ちゃん、大丈夫か?撮影中になぜ溺れたんだ?現場のスタッフたちは全員バカなのか!」
夏野暖香は我に返り、眉毛が天まで上がりそうな南条飛鴻の可愛らしい様子を見て、思わず笑みを浮かべた。
「もう大丈夫よ……ちょっと足がつっただけ……」
傍らにいた関口月子はその言葉を聞いて不満げに南条飛鴻を睨みつけた。「誰がバカだって言ったの!?」
南条飛鴻:……
夏野暖香は思わず吹き出した。
「スタッフのことを言ったんだよ……お前に何の関係があるんだ?」南条飛鴻は困ったように言った。
傍らの橋本健太も笑いを抑えられず、前に出て花束を夏野暖香に差し出した。「俺は飛鴻と練習していたんだ。君が事故に遭ったという知らせを受けてすぐに駆けつけた。無事で何よりだ」
関口月子はすぐに言った。「暖香ちゃん、怒らないでね……実は飛鴻が前から頼んでいたの。もし何かあったら必ず彼に知らせてほしいって……帝様が来ていなかったから、さっきトイレに行った時に彼に電話したの……」
夏野暖香は首を振った。「月子、どうして怒るわけ?ありがとう」
関口月子はにこにこ笑って言った。「勝手なことをしたって怒らないなら、私も嬉しいわ!」
夏野暖香は花束を受け取ると、爽やかな香りが鼻をくすぐり、心身ともにリラックスした。赤いバラと白いユリがあり、まだ露が付いていた。
確かに……彼女の好きなチューリップではなかったが、南條漠真からもらったものなら、何でも好きだった!
夏野暖香は花の香りを嗅ぎながら、うれしそうに考えた。
「ありがとう……この花、とても綺麗……」夏野暖香は頬を赤らめ、胸の高鳴りを抑えながら橋本健太に言った。
橋本健太は鼻先をこすり、笑みを浮かべた。「実は……この花は飛鴻が選んだんだ。俺はこういうものを買うのはあまり得意じゃなくて。君が喜んでくれれば良かった」
夏野暖香:……
くそ……南条飛鴻が選んだものだったのか!
彼女は突然、エレベーターの中で南条慶悟が橋本健太をロマンチックじゃないと非難し、彼女に花を贈らないと言っていたことを思い出した。