第404章 甜い「心」

南条陽凌がいなくたって何だというの?橋本健太がいなくたって何だというの?少なくとも、彼女にはまだ南条飛鴻がいる、この無条件で彼女を支え、気にかけ、守ってくれる人が!

「暖香ちゃん……どうして泣いているの?」関口月子は心配そうに尋ねた。

「そうよ暖香ちゃん、どうしたの?」南条飛鴻は手に持っていたものを置き、急いでベッドの端に座り、彼女の手から花を取って脇に置くと、緊張した様子で彼女の肩をつかんで言った。「何か私が間違ったこと言った?」

関口月子は言った。「あなたが悪いのよ、帝様は仕事で忙しくて暖香ちゃんに会いに来れなかったから、暖香ちゃんはもう十分傷ついているのに!あなたがそんなこと持ち出すなんて!」

南条飛鴻はそれを聞くと、急いで自分の口を強く叩き、慌てて手で彼女の涙を拭いながら言った。「全部私が悪いんだ、暖香ちゃん……泣かないで、ごめんなさい……南条陽凌のあのろくでなしの話はもうしないから……泣かないで……」

夏野暖香は涙を止め、南条飛鴻を見た。彼は間違いを犯した子供のように、後悔の表情を浮かべ、今にも泣きそうだった。彼女は彼の様子に思わず笑ってしまった。

「ハハハ……笑ってくれて良かった……」南条飛鴻も嬉しそうに笑い、眉毛が上がり、そそくさと脇へ行って果物を取りに行った。「暖香ちゃん、リンゴの皮むいてあげるね!」

しばらくして、一人の医者がノックして入ってきた。手にノートを持ち、数人を見て言った。「夏野暖香さんですね?患者の家族の方はどなたですか、患者さんの入院手続きがまだ済んでいませんので、後で受付で入院手続きをお願いします。」

そう言うと、ノートに何かを書き込み、そのまま立ち去った。

「あ?」南条飛鴻は急いで立ち上がった。「暖香ちゃん、手続きしてくるね、ちょっと待っていて。」

夏野暖香はうなずいた。

「どこに行けばいいかわからないでしょ、案内するわ。」関口月子は急いで言った。

こうして、二人は一緒に部屋を出て行った。

病室には夏野暖香と橋本健太の二人だけが残された。

一瞬、橋本健太の顔に少し戸惑いの色が浮かんだようだった。

「あの……果物食べてよ。」そう言って、脇にあるリンゴを手に取った。

しかし、それは橋本健太が半分むいたものだった。

「あ……あの……私がむいてあげるよ。」