福祉施設は条件が限られており、すべての子供が小学校、中学校、高校と進学することはできませんでした……そのため、子供が年齢に達したら養子に出したいと常に願っていましたが、夏野暖香ちゃんはすでに10歳を超えており、養親候補者は年齢を聞くとほとんどが諦めてしまいました。
そして、養子に出されなかった子供たちは、学業成績が優秀で支援を受けられる子だけが中学・高校へ進学できました。
七々は特別賢い子ではなく、どの面でも特に優れているとは言えず、多くの子供たちと同様に、成績はいつも平凡でした。
だから、当時の現実は、彼女がずっと養子に出されなければ、中学校に進学できるかどうかさえ問題でした。
後に、施設長は彼女に告げました。南條漠真が去る時、彼を連れて行った家族が福祉施設に多額の寄付をし、南條漠真は特に、どんなことがあっても七々を学校に通わせ、高校、大学へと進学させるよう指示したと。
夏野暖香ちゃんは施設長のその時の眼差しを決して忘れられませんでした。涙を浮かべた目で彼女を見つめ、悲しみと感動が込められていました。
それ以来、福祉施設の状況は徐々に良くなり、一週間に一度しか果物を食べられなかったのが、全国各地の善意の人々から送られたおもちゃや人形をみんなが受け取るようになり、進学の心配もなくなりました。
すべての子供たちと施設長、先生たちは晴れやかな表情をしていました。
しかし夏野暖香ちゃんは自分の太陽を失ってしまったことを知っていました。毎日早く大人になり、強く目に見えない翼を生やして、南條漠真を探しに飛んでいけることを願うだけでした。
今……彼女はついに南條漠真を見つけましたが、もはや以前の七々ではありません。
彼女はもうあの純粋な七々ではなく、南條漠真が愛し大切にしていた小さな女の子ではありません。
今の彼女は、まだ南條漠真にふさわしいのでしょうか?
たとえ南條漠真が彼女が本当の七々だと知ったとしても、彼は彼女の現在の身分を受け入れることができるでしょうか?
涙が一滴また一滴と目尻から流れ落ち、夏野暖香ちゃんは橋本健太の言葉を思い出すと、何かが自分の心臓をえぐり取るような感覚がしました。
夏野暖香、悪意に満ちた人間はお前だ、二度と姿を見せるな……