第575章 私たちはすでに離婚しています

まさか、彼は鍵を持っているの？夏野暖香が疑問に思っていると、突然彼がこちらに向かって歩いてくるのを感じた。彼女は無意識に顔を上げた。

南条陽凌の顔色は最悪で、彼女を一瞥もせずに窓際に歩み寄り、窓を開けた。

夏野暖香の顔色が少し変わった。

彼は飛び降りるつもり？

南条陽凌は窓の外のバルコニーに出た。彼女は目を見開いた。事実、南条陽凌はそんなに馬鹿ではなかった。

彼はただバルコニーを通って隣の窓に移り、中に入っただけだった。

夏野暖香は立ち上がり、窓際に歩み寄った。

しばらくすると、下階からの物音が聞こえた。

南条陽凌の車がゆっくりと動き出し、屋敷から出て行った。

この男、最初から逃げ道を知っていたなんて！

夏野暖香は憤然と思った。

寒気を感じ、彼女は急いで窓を閉めた。

彼が出て行ってくれて良かった、これでベッドで一人で寝られる。

枕を抱えてベッドに行ったが、シーツの上も、布団の中も、彼の匂いでいっぱいだった。

夏野暖香は嫌悪感を抱きながら布団を脇に投げ、寝返りを打った。

しかし頭の中では、さっき暗闇の中で目の前に浮かんだ端正な顔が何度も浮かんでくる。

南条陽凌……早く私の頭から出て行って！

彼女は怒って抱き枕を持ち上げ、力強く振り回した。

この男、こんな遅くに、発散できなくて、他の女のところに行ったんじゃないだろうか？

でも、それが彼女に何の関係があるというのだろう。

夏野暖香は憤然と思った、この男のことなど、考える価値もない！

また眠れない一夜だった。

朝方、夏野暖香は階下に降りた。

南条晋也はすでに起きていて、リビングで武術の練習をしていた。

「おじいさま、おはよう……」

南条晋也は振り返って彼女を一瞥し、尋ねた。「陽凌はどうした？なぜ降りてこない？」

夏野暖香は気まずく笑った。「彼は……朝早くに用事があって出かけました。」

南条晋也は動きを止めた。

側にいた使用人がすぐにタオルを差し出した。

南条晋也は暖香の前に歩み寄り、鋭い目で彼女を見つめた。

「暖香ちゃん、陽凌はまた昨夜出かけたのか？」

夏野暖香は黙っていた。

南条晋也はすでにある程度察していて、ソファに座った。

「おいで、暖香ちゃん、座って、おじいさんと話をしよう。」

夏野暖香はうなずき、南条晋也の前に座った。