第576章 彼女はどう選ぶべきか

ところが、南条晋也は笑った。

「いいね、私の目に狂いはなかった。暖香ちゃんは優しい子だ」彼は頷きながら言った。

夏野暖香:「……」

「わかっている、君は祖父を騙したくないんだね。でも南条陽凌はNGグループの後継者だ。彼の結婚は、君たち二人だけの問題ではなく、NGグループ全体の問題でもある。

だから、君が協定書に署名したからといって、君たちが夫婦でなくなるわけではない。

たとえ陽凌がこの協定書を裁判所に提出したとしても、私南条晋也の一言で、いつでも無効にすることができる!

だから...安心しなさい、君は今でも南条帝国の若奥様であり、陽凌の妻だ」

南条晋也は静かに、一言一言はっきりと言った。

夏野暖香は恐る恐る聞いていた。

どういう意味?

彼女と南条陽凌は、結局、今でも合法的な夫婦なの?

おじいさんの言う意味は、彼が同意しない限り、離婚協定書に署名しても無駄だということ?

なんてこと、この人は南条陽凌よりも百倍も強引だわ。

実際、南条晋也は年齢は高いが、同年代の老人より十数歳若く見える。

だから老けて見えない。

むしろ彼には、生まれながらの気品があり、普通の老人とはまったく違って見える。

夏野暖香は突然、南条陽凌が年を取ったら、こうなるのかしらと思った。

彼女の心は複雑な不安に陥った。

「わかっている、君は心の中で陽凌を愛しているんだ。彼はそういう性格で、小さい頃から私に甘やかされてきた。だから、暖香ちゃん、君たちが結婚した時、君はおじいさんに、いつでも彼のそばにいると約束したじゃないか、忘れたのかい?」

夏野暖香はハッとした。

何かを思い出したように、急いで言った。「おじいさん、あなたが知らないことがあります...」

「おや、何だい?」南条晋也は興味深そうに尋ねた。

「私、記憶喪失なんです。だから...実は、以前のことを覚えていないんです。おじいさんのことさえ、昨日初めて知りました」

「記憶喪失?」南条晋也の目が深く沈んだ。

「なるほど...」彼はつぶやいた。今回の夏野暖香と南条陽凌の様子がまったく違うと感じたのはそのためか。夏野暖香の性格も、以前とは違っていた。

「またあの小僧が何かやらかしたのか?医者には診てもらったのか?」