第580章 美女は禍水

「はいはい……」

「社長の言う通りです……」株主たちは南条と敵対しないことを見て、皆気分が良くなり、橋本健太が何を言っても、同意するばかりだった。

しかし、空気が読めない者もいて、思わず口を開いた。「社長、おっしゃる通りですが。しかし……あなたと綾瀬さんの恋愛関係は、グループ全体が知っていることです。噂を完全に打ち消すためには、やはりあなたと綾瀬さんが一緒に出てくる必要があると思います……」

「私と綾瀬栞のことは、会社とは何の関係もない!」橋本健太は顔色を少し曇らせて彼の言葉を遮った。

「だから、皆さんは私たちの感情を利用して記事にすることを考えないでください。この件はこれで終わりです。時期が来たら、我が社は記者会見を開き、私と蒋田雪さんの誤解を解消します。以上、解散!」

橋本健太は言い終わると、立ち上がり、部屋を出て行った。

皆は顔を見合わせた。

「この社長と綾瀬さん、一体どうなっているんだ……」

「まあまあ、若い者同士、喧嘩するのは普通のことだよ。若社長が婚約を破棄したいと思っても、会長は許さないだろう。だから皆安心してください……」

「そうそう、蒋田雪というトラブルメーカーと関係がなければいいんだ……私に言わせれば、女というのは美人薄命で、我々の社長はとても賢くて、このトラブルメーカーを南条若様の方に投げたんだ!」

「ふふふ……南条グループもきっと大混乱になっているだろうね。私たちに影響がなければ、面白い展開を見守るだけだ……」

すべての株主は歩きながら、興奮して議論していた。

……

カフェにて。

隅の席で、蒋田雪はサングラスをかけ、煙を吐きながら、対面に座る男性を憧れの眼差しで見つめていた。

「陽介、あなたは本当にすごいわ。ちょっと手を加えただけで、南条帝国と橋本グループが一夜にして大混乱になった。今頃、南条陽凌と橋本健太の二人はきっと熱した鍋の上の蟻のように、焦って右往左往しているわ。」

佐藤陽介は冷たい表情で彼女の向かいに座り、蒋田雪の顔にあるような喜びは見せていなかった。

ただコーヒーカップをかき混ぜながら、口角に笑みを浮かべ、意味深げに言った。「これはすべて始まりに過ぎない。今、橋本健太は記憶喪失になっている。本当の見せ場はまだこれからだ。」