第590章 まさかあなたは彼を愛し始めたのか

南条漠真、もしかして、本当に私の心が天に通じたの？私は本当に満足すべきなのかしら。

橋本健太は頭を垂れ、彼女の額に軽くキスをし、何度も何度もキスを繰り返した。彼らはお互いを抱きしめ、長い間離れようとしなかった。

そのとき、夏野暖香のポケットの携帯電話が鳴り始めた。

二人は同時に驚き、橋本健太は彼女を離した。彼女は急いで携帯電話を取り出した。

画面には「夫」という文字がはっきりと表示され、橋本健太の目を刺した。

彼は彼女を一瞥し、彼女の目に動揺が走るのを見た。彼女は急いで身を翻し、彼から離れて少し歩いた。

そして電話に出た。

向こう側から、南条陽凌の冷たい声が聞こえてきた。

「夏野暖香、どこに行ったんだ？なぜまだ帰ってこないんだ？家族全員が食事を待っていることを知っているのか？」

夏野暖香はそれを聞いて、急いで言った。「待たないで。私はさっき関口月子と食べたわ。おじいさんにそう伝えて...」家族全員が待っているって、実際にはあなたとおじいさんの二人だけでしょ！

「夏野暖香、お前は本当に大胆だな！さっき帰ると約束したじゃないか？なのに食べたって言うのか？！」向こう側で南条陽凌が不満そうに叫んだ。

「もういいわ...話はここまで、切るわ」夏野暖香はそう言って、急いで電話を切った。

振り返ると、橋本健太が街灯の下で一人タバコを吸っていた。

彼女は彼に近づいた。

「帰らなきゃ...」

橋本健太は何かを堪えるように深く息を吸った。

手にしていたタバコを消した。

前に進み、彼女の肩を抱き、車へと歩き始めた。

夏野暖香は通りの人々を見ながら、少し居心地悪そうにもがいた。

しかし橋本健太は彼女を離さず、直接車のドアを開け、彼女を車の中に入れた。

ドアを閉め、運転席に滑り込んだ。

彼女のポケットの携帯電話がまた鳴り始めた。夏野暖香は切ったが、南条陽凌は何度も掛けてきた。

隣に座っていた橋本健太が突然手を伸ばし、彼女の携帯電話を奪って出ようとした。

夏野暖香は色を失い、急いで彼の腕をつかんで叫んだ。「やめて—」彼女は懇願するように彼を見つめた。

橋本健太は携帯電話を握りしめ、まるで熱い芋でも持っているかのようだった。

彼は深く彼女を見つめ、彼女の目の中の動揺と困惑を見た。彼は歯を食いしばり、我慢して携帯電話を彼女に返した。