第589章 この世であなたと出会う

しかし多くの場合、夢の中の七々は話さず、ただ彼に甘い笑顔を見せるだけなのに、彼は狂人のように何度も早く眠りにつき、ただ夢の中で、桜の木の下で、彼女の甘美な笑顔に出会うためだけに。

幼い頃、彼はずっと七々が可哀想な子だと思っていた。生まれてすぐに両親に捨てられたのだから。だから、彼はずっと彼女を手のひらに乗せるように大切にし、世話をし、守ってきた。しかし、自分がいつか彼女の両親のように、彼女を無情にも捨ててしまうことになるとは、考えもしなかった。

彼は自分を許すことができなかった。かつて彼らを捨てた両親を許せないのと同じように。

夏野暖香は彼の言葉を聞いて、突然黙り込んだ。

彼女がどうして分からないことがあろうか！この世界で、おそらく彼女以上にその感覚を理解できる人はいないだろう！

しかし……

彼女は再び頭を振った。

彼女は手を伸ばし、力強く彼から身を引き離した。

決然とした、冷たい口調で言った：「誤解よ、私は七々じゃない。」

橋本健太は彼女を見つめ、視線を彼女に固定した。

丸10秒間。

彼は少し目を閉じ、長く息を吐いた。

そして手を伸ばし、彼女の肩をつかみ、彼女を見つめながら、ゆっくりと一言一言はっきりと言った：「夏野暖香、こんにちは、私は橋本健太です……今、厳かに告げます。あなたが誰であろうと、もう二度と手放しません。あなたに私の側に戻ってきてほしい、そしてこれからは、永遠に、二度と離れないでほしい！」

夏野暖香：「……」

彼女は彼を見つめた。彼の言葉は、あまりにも心を動かし、あまりにも断固としていた。

彼女は、自分が反論する理由を何一つ見つけられないことに気づいた。

このように横暴で頑固な南條漠真は、彼女にとって見知らぬ、新鮮で、特別な存在だった。

しかし……彼女は心の奥底で、このような彼を切望していることに気づいた。

女性が「いらない」と言うとき、それは大抵「欲しい」という意味だ。

この点は、恋人の前では、確かに絶対的に当てはまる。

彼女は目の前の男を見つめ、突然心がとても温かく、柔らかくなるのを感じた。

まるで羽毛が静かに心をなでるように、彼女は認めざるを得なかった。目の前の男は、この瞬間、完全に彼女の心を動かしていた。

彼女は思わず手を伸ばし、彼の腰に腕を回した。そして顔を、そっと、慎重に彼の胸に寄せた。