第588章 七々ついにあなたを見つけた

彼女の体は震え、頭の中は混沌としていた。

彼女はどうすればいいのだろう……彼女に何ができるというのだろう？彼女はもう昔の七々ではない。かつてのように、彼の前でわがままに振る舞い、彼さえいれば何も恐れることはないと思っていた資格が、まだ彼女にあるのだろうか？

いいえ……あの天地の高さも知らなかった七々はもう死んでしまった。

彼女は別の夏野暖香になってしまった。それは多くのことが、一人の力では変えられないことを運命づけていた。

大粒の涙が落ち、橋本健太の手の甲に、足元の地面に落ちた。

いつの間にか、空から雪が舞い始めていた。

夏野暖香は冷たさを感じ、目を開けると、空から小さな雪の結晶が一片一片と降り注いでいるのを見た。

彼女は苦々しく思った。まるで神様も彼らのために泣いているかのようだ。

彼女は呟いた。「ごめんなさい……私はもう昔の七々じゃないの。私は……結婚してしまったの。南條漠真、ごめんなさい……もう手を放して！そうすれば、あなたにとっても、私にとっても、それが一番いい結末なの。」

「いや！」橋本健太の腕の力が強まった。彼は彼女をきつく抱きしめ、熱い息が彼女の耳元にかかり、激しい鼓動が彼女の背中に伝わってきた。彼は頑固に、そして深く言った。「手放すことはない。絶対に二度と離れたりしない！」

「ただ……私を見つけなかったことにして。どうせ、この何年も、そうやって過ごしてきたじゃない？」彼女は弱々しく小さな声で言った。

橋本健太の体は、何かに打たれたかのように、ピクリと激しく震えた。

彼は彼女を放し、彼女の体を回転させて、彼の方を向かせた。

夏野暖香は俯いたまま、彼の目を見る勇気がなかった。

彼は手を伸ばし、彼女の顎を持ち上げ、顔を上げさせた。そして、彼女の視線は彼と交わった。

電撃のように、彼の漆黒の瞳には熱い炎が燃えていた。その炎の上には濃い霧が漂い、回転し、跳ね上がり、奇妙な形を作っていた。その霧は火山の噴火時に飛び散る炎のようで、むき出しのまま彼女の心の中まで焼き付いた。

「七々……どうしてそんなに冷たくできるの。十年も離れていたからこそ、別れの苦しみを知ったんだ。だから、二度目は本当に耐えられない、わかるだろう？」