第592章 私はずっとあなたの側にいる

おそらく、橋本健太も同じだったのだろう。

彼の視線はいつも彼女を見つめ、その眼差しは情熱的で熱い。彼女はその視線に心が温かくなると同時に、何とも言えない痛みも感じていた。それはとても軽く、小さいものだったが、確かに彼女の心を揺さぶっていた。

しかし彼女はその痛みを考えないように、彼を無視するように努めていた。

飛行機が滑走路に入ると、彼は彼女の隣に座り、大きな手で彼女の手を握り、頭を下げて柔らかく長いキスを彼女の手の甲に押し当てた。

そして彼らはお互いを見つめ、馬鹿みたいに笑い合った。

「こうして出てきて、会社は大丈夫なの？」彼女は笑みを含みながら、ついに我慢できずに尋ねた。

「たぶんね！」橋本健太は少年のような茶目っ気たっぷりに、彼女をじっと見つめながら言った。「でもどうでもいいよ、僕は七々を見つけたんだ。今は、世界中のことなんてどうでもいい。」

夏野暖香は思わずまた笑い出し、涙が出るほど笑った。

南條漠真、あなたは本当にバカね、心が痛くなるほどのバカ。

彼女は指先で彼の美しい横顔をなぞり、彼は彼女の手の甲に自分の手を重ねた。

「七々、君は本当に美しい」彼は突然口を開いた。

「そう？」彼女はわざとイタズラっぽく尋ねた。「昔の七々が美しいの？それとも今の夏野暖香が美しいの？」

「どちらも美しい」

「そう言うと思った」彼女はわざと怒ったふりをして顔を背けた。

そして彼女の耳元に熱い息が吹きかけられた。「君であれば、僕の目には、いつだって最も美しく映る」

彼女は笑い出し、彼を横目で見た。「いつからそんなに口が上手くなったの？」

彼は大いに委縮し、彼女の手をぎゅっと握った。「君の前でだけ、こうなるんだ！」

「本当？」夏野暖香は信じられないという顔で彼を見つめた。頭の中では、南条慶悟が以前言っていたことが浮かんできた。橋本健太という人は、特につまらない人間だと。

ふと南条慶悟のことを思い出し、彼女の体は急に硬直した。

ああ...彼女はほとんど忘れていた。

彼女は今何をしているのだろう？もし...もし南条慶悟が今の彼女と南條漠真のこの様子を見たら、銃を取り出して彼女を撃ち殺してしまうのではないだろうか？

前回、藤田抑子を狂ったように殴ったように。