第608章 あなたという憎らしい女

南条陽凌と藤田抑子がプーケット島に到着したときには、すでに翌日の明け方だった。

飛行機を降りるとすぐに船に乗り、急いで橋本健太と暖香ちゃんが滞在しているホテルへ向かった。

一方、橋本健太は警察の船に同乗して近海を一晩中捜索し、可能性のある近隣の島々や通過する船をすべて調べたが、何の手がかりも得られなかった。

戻ってきたときには、まるで魂を失ったかのように元気なく、ソファに座り込んでいた。

南条陽凌がホテルのロビーに駆け込むと、藤田抑子が彼の側にいた。出迎えに来た警官、タイ駐在の責任者、そしてホテルマネージャーが彼の後ろについて歩いていた。縮れ毛のタイ人警官は彼の耳元で状況を説明し続け、早口でたくさんのことを話した。要するに、あまり焦らないでほしい、警察は捜査中だということだった。

日本人の男性責任者は早くから彼の身分を知っており、横で息をするのも恐れるように笑顔を浮かべ、安心してほしい、結果がどうであれ、必ず彼らに説明すると言った。

南条陽凌の全身からは破滅寸前のオーラが放たれ、彫刻のような端正な顔は霜に覆われていた。彼が部屋の前に来ると、ホテルマネージャーは急いでカードで扉を開けた。

そこには表情のない橋本健太がリビングに呆然と座っていた。南条陽凌は部屋を見回し、すでに夏野暖香の姿が見えないことは知っていたが、彼女の荷物が隅に置かれているのを見ると、心が激しく揺さぶられるのを抑えられなかった。

今回の出来事は以前とは全く異なり、彼の心配と恐怖も前例のないほど頂点に達していた。ここは異国の地であり、夏野暖香の生死は不明だった。彼は最大限の力を尽くして人を派遣して捜索させたが、それは大海の中の針を探すようなものだった。

そして無傷で座っている橋本健太を見ると、怒りが爆発しそうになった。

彼に駆け寄り、激しく橋本健太の襟首をつかむと、鉄拳を振り下ろした。

一撃、そして続けて二発。

周りの人々は皆呆然として、誰も止める勇気がなかった。

特に藤田抑子は鉄人のように立ち尽くし、腰には二丁の拳銃を差していた。空気は極限まで緊張していた。