第609章 私はあなたの家族全員を道連れにする

藤田抑子は入り口に立ち、南条陽凌の背中を見ながら、心の中でため息をついた。

そのとき、突然、リビングルームの携帯電話が鳴り始めた。

橋本健太は全身が硬直し、テーブルの上の携帯電話を見つめると、全員が我に返った。

警官が言った:「誘拐犯からの電話かもしれません?」

南条陽凌は全身が硬直し、急いでドアから飛び出した。

橋本健太は電話を取り、画面に表示された見知らぬ番号を見た。

全員が目を見開いて見つめる中、警官はノートパソコンを取り出し、傍らに置いて言った:「できるだけ通話を長引かせてください。彼の携帯電話に追跡装置を取り付けました。衛星を通じて相手の位置をすぐに特定します!」

南条陽凌はうなずき、歯を食いしばって言った:「私が出ます!」そう言って、橋本健太から携帯電話を奪い、数秒間考えてから電話に出た。

「もしもし……」向こう側から、陰気な声が聞こえてきた。

「橋本健太か?お前の女は俺のところにいる。彼女を生かしたければ、5000万円持ってこい!お前一人で来い、警察を連れてくるなよ、さもないと、すぐに彼女を殺す!」

南条陽凌は息を殺し、怒りを必死に抑えながら歯を食いしばって言った:「たかが5000万じゃないか?払ってやる!だが暖香ちゃんが無事だという証拠はどこにある?彼女に話をさせろ!」

この時、夏野暖香はすでに小さな島に連れて来られていた。彼女はここがどこなのか分からず、ただ古びた草小屋に閉じ込められていた。数人の男たちが近くのテーブルを囲んで座り、夏野暖香を見ていた。

夏野暖香は手を縛られ、口にはテープが貼られていた。

山下一郎が目配せすると、金髪の一人が前に出て、夏野暖香のテープを剥がした。

「健太!健太、助けて——!」

「暖香ちゃん!暖香ちゃん!」南条陽凌は夏野暖香の声を聞くと、全身が震え、大声で叫んだ:「大丈夫か?彼らに何もされていないか?!」

傍らの橋本健太も興奮して立ち上がった。暖香ちゃんだ……暖香ちゃんの声だ!

彼は興奮のあまり何をすべきか分からなかったが、この状況では声を出さないほうがいいと分かっていた。誘拐犯を怒らせてはいけない!

夏野暖香は南条陽凌の声を聞いて、一瞬固まった。

南条陽凌?