彼から見れば、人が野心や欲望を持つことは憎むべきことではなく、自分の野心や欲望のために自分自身を売り渡すことさえ大したことではない。結局は双方の合意の上のことであり、犯罪行為ではないのだから。
ただ、もし人が本来は虚栄心に満ちているのに、自分を清廉潔白で無害な姿に偽装するなら、それは好ましくない。
藤原輝矢から見れば、林薫織はまさにそういう人間であり、彼が最も嫌うのはこのような人間だった。
藤原輝矢はソファにだらしなく寄りかかり、足を組んで、床を拭いている林薫織を横目で一瞥して命令した。「お前、俺に水を一杯持ってこい」
林薫織の動きが一瞬止まったが、結局は立ち上がってキッチンへ向かった。しばらくすると、一杯の水が藤原輝矢の前に運ばれてきた。
藤原輝矢は目を上げてコップの水を一瞥し、だらけた調子で言った。「この水は汚れている。もう一杯持ってこい」