第45章 恋敵対面

藤原輝矢は撮影現場でシーンを撮り終え、休憩中に暇を持て余して、携帯を取り出し、連絡先から「木の塊」を見つけて電話をかけた。

電話は二回鳴った後、相手が出て、馴染みのある冷たい声が聞こえた。「もしもし?藤原さん?」

「何してるの?」言葉が口から出た瞬間、藤原輝矢は自分の言い方が少し不適切だと気づき、二回咳払いをして、真面目な口調で言った。「サボってないだろうな?」

「藤原さん、サボってなんかいません。」

「サボってないならいいよ。私があなたを雇ったのは、怠け者になってもらうためじゃないからね。そうだ、お昼は豚の角煮が食べたい。」

「藤原さん、今日はお昼ご飯を家で食べられるんですか?」

「誰が家で食べるって言ったんだ?今、撮影現場にいるんだよ。私が言いたいのは、料理を作って、ここに持ってきてくれってことだよ、バカ!」

撮影現場?林薫織は眉をひそめた。彼女は撮影現場がどこにあるのか知らなかった。

「撮影現場の住所は後で送るよ。急いでね、もし私がお腹を空かせたままだったら、ただじゃおかないからな!」

林薫織は無意識に携帯の受話器を少し遠ざけ、小さな声で言った。「わかりました、藤原さん、できるだけ早く。」

藤原輝矢は満足して電話を切った。やはりこの木の塊をクビにしなかったのは、それなりに良かったようだ。

藤原次男様の機嫌が良かったので、仕事の効率も自然と上がり、いくつかのシーンは一発OKで、現場のスタッフ全員がほっとした。特に彼の相手役の禾木瑛香は。

このCMを撮影するために、彼女はT市でかなりの時間を費やし、氷川泉と過ごす時間も減っていた。彼女は心の中で少し不満だったが、表には出さなかった。結局、藤原輝矢は二流三流のスターではなく、彼と仲違いしても彼女にとって良いことはなかった。

……

幸い、撮影現場は藤原輝矢のアパートからそれほど遠くなく、林薫織が撮影現場に到着したときは、ちょうど12時を過ぎたところだった。

撮影現場はT市の中央公園の芝生の上にあり、芝生は広く、見渡す限り緑一色だった。撮影現場の周りには人が集まっており、その多くは若い女の子たちで、一人一人がプラカードを持っていた。林薫織が近づいて見ると、プラカードには藤原輝矢のポスターが貼られており、その様子はコンサート会場のようだった。