「誰に会ったかなんて、私に関係あるの?」
「それはわからないけど、でも興味があるんじゃないかと思って。さっきあなたの小さなベビーシッターに会ったんだよ。それにね、そのベビーシッターの隣には男性がいたの。私の観察によると、その男性はおそらく彼女のお見合い相手だったわ。もしもし...もしもし?」電話の向こうからは既に話中音が聞こえていた。
木村響子は興味深そうに唇を曲げた。どうやらそのベビーシッターは藤原輝矢の心の中で軽くない存在のようだ。それなら、彼女はこの面白い展開を見守ることにしよう。
......
白いキャデラックが林薫織の住むマンションの入り口にしっかりと停車した。林薫織は横にいる男性に視線を向け、心から言った。「ありがとうございます、先輩」
林薫織を送るために、伊藤逸夫は大きく遠回りをした。このことに、林薫織は少し申し訳なく感じていた。彼女は本来なら彼にお礼の意味を込めて食事に誘おうと思っていたが、もし男性が彼女に興味がなければ、かえって相手に迷惑をかけてしまうかもしれないと心配し、しばらく迷った末、結局諦めることにした。