第85章 顔面損壊

林薫織は肩に置かれた大きな手をじっと見つめ、胃の不快感を抑えながら、低い声で言った。「お客様、手を離してください。」

「おや、あまり喜んでないようだな。」男は手を引っ込めるどころか、むしろ無遠慮に林薫織の頬に触れた。「ツツツ、この肌の滑らかさ、少し力を入れれば水が出るほどだろう。お嬢さん、おいくつだい？」

湿った温かさが肌に触れ、まるで無数の蟻が林薫織の顔を這い回るようで、全身の毛が逆立った。

林薫織は拳をきつく握りしめ、冷たい声で言った。「お客様、自重してください！」

「自重？ふふふ……俺は生まれてこのかた、自重なんて字の書き方も知らないよ。」男は軽く笑い、薄い唇を突然近づけてきた。「お前が教えてくれよ、自重ってのは一体何なんだ？」

ここにいる男たちの多くは恥知らずで下品で、礼儀や廉恥心というものを全く理解していなかった。

男の唇が林薫織の頬に触れそうになった瞬間、彼女は素早く身をかわし、危うく避けた。しかし、次の瞬間、腰が腕にきつく抱きしめられた。

「お嬢ちゃん、怖がるなよ、俺様と少し遊んでくれれば、後でたっぷり良いことがあるぜ。」男は先ほど空振りしたことに満足せず、片手で林薫織の顔を固定し、キスしようとした。

男の油ぎった老けた顔が林薫織の瞳に映り、その濃厚な酒の臭いに吐き気を催しそうになった。彼女はどこからか力が湧いてきて、男の腕から逃れ、手を上げて思い切り平手打ちをくらわせた。

男はその場で呆然とし、何が起きたのかを理解すると、怒りが爆発し、林薫織に向かって強く蹴りを入れた。

林薫織は数メートル飛ばされ、内臓がずれるような痛みを感じた。彼女が地面から這い上がろうとしたとき、胸が男の足に強く踏みつけられた。

男は彼女の髪をつかみ、力強く引き寄せながら冷たく言った。「俺はこの世界で何年も生きてきたが、俺の前で暴れる奴なんていなかった。お前が初めてだ。」

林薫織は冷や汗を流しながら痛みに耐え、肋骨がきしむ音が聞こえるようだった。この男は明らかに武術の心得があり、手加減を知らなかった。

男の凶暴な目が彼女の右手に落ちた。「もしお前が男だったら、この手はもう使い物にならなくなっていただろう。だが……お前の顔が俺の好みだということで、今回は見逃してやる。ただし条件がある——一晩俺と寝るのはどうだ？」