第163章 坊ちゃんは価値があると思う

実は、林薫織は適当に言っているわけではなかった。氷川泉との失敗した結婚生活で彼女はすっかり諦めていた。もう愛情など望まず、ましてや他の普通の人々のように幸せを得ることなど望んでいなかった。

しかし藤原輝矢は彼女が適当に言っているだけだと思い、悪戯っぽく笑って言った。「大丈夫、もし嫁に行けないなら、俺がお前を引き取ってやるよ。廃物利用ってやつだ」

藤原輝矢の口調は軽薄だったが、その言葉の意味は半分本気だった。林薫織の心に一瞬違和感が走ったが、すぐに押し殺して、もごもごと言った。「藤原さん、勘弁してください。私は廃物利用されたくありません。それに、あなたを待っている美女はたくさんいるでしょう。私のような廃物のために広大な森を諦めるなんて価値がありませんよ」

「価値があるかどうかはお前が決めることじゃない。俺が価値があると思えば、それでいいんだ」

林薫織は突然言葉に詰まった。彼女には藤原輝矢がただ冗談を言っているのか、それとも本気なのか分からなかった。ただ、冗談でも本気でも、彼女には耐えられないものだった。

彼女は顔を横に向け、きらめく海面を見つめながら話題を変えた。「藤原さん、私たちはどこへ行くんですか？」

藤原輝矢は彼女に向かってウインクした。「着けばわかるさ」

ヨットが海上を1時間ほど進んだ後、彼らは夢のような海域に入った。海の中央には小さな島があり、その周りはゴールデンコーストに囲まれていた。ゴールデンコーストの外側には青緑色の海水が広がり、その水は透き通っていて、太陽の光を浴びると宝石のように美しく、心を魅了した。

林薫織は思わずデッキから立ち上がり、目の前の美しい景色を呆然と見つめた。まるで夢の中にいるようで、すべてが美しすぎて現実とは思えなかった。

「どう？ここ、きれいだろう？」

「とても美しいです！」林薫織は心から言った。

藤原輝矢は林薫織の横顔に視線を向け、笑いながら言った。「この島はまだ開発されていなくて、訪れる人も少ない。ここのすべては破壊されておらず、ほとんど元のままの姿を保っている。気に入ったなら、これからも毎年ここに連れてきてやるよ」

「藤原さんの社員になると、福利厚生が本当に素晴らしいですね」

「誰もがこんな福利厚生を受けられるわけじゃないぞ」