第166章 あなたは輝矢から離れなければならない

実は、この時の林薫織は藤原輝矢の兄がどれほど恐ろしいかを考える余裕はなく、ただ何とかして藤原輝矢を目覚めさせようと必死だった。

しかし、藤原輝矢の顔色がどんどん悪くなり、声もますます弱くなっていくのを見て、彼女は焦りを感じていた。時間を確認すると、彼らが来た時はおよそ1時間かかったが、今はすでに40分以上経過しており、あと10分ほどで岸に着くはずだった。

病院の方では、彼女はすでに夏芽礼奈に松根に連絡するよう頼んでおり、病院との連絡を事前に取ってもらっていた。彼らが上陸すれば、すぐに病院へ直行できるようにするためだ。

松根たちと合流した時、藤原輝矢はすでに完全に意識不明の状態だった。幸い、医療スタッフがすでに待機しており、藤原輝矢が到着するとすぐに救急車に乗せられ、緊急処置が施された。

林薫織は松根と共に救急車に乗り込み、生気のない藤原輝矢の端正な顔を見つめながら、心が沈み続けていくのを感じていた。

松根は藤原輝矢と幼い頃から一緒に育ってきたが、藤原輝矢がこのような状態になるのを見たことがなかった。

彼女は目を伏せ、いつもなら泰山が崩れても動じない冷静さを持つ藤原輝矢を見つめた。その落ち着きと余裕は今や崩れ去っていた。彼女は顔を引き締めて林薫織に尋ねた。「彼はどうして蛇に噛まれたの?」

「藤原さんは...藤原さんは私を助けようとして怪我をしたんです」林薫織は小さな声で言った。

松根の表情はさらに険しくなった。彼女は冷たい目で林薫織を見つめ、冷ややかに言った。「林薫織、輝矢に何も起こらないことを祈りなさい。さもないと...あなたが耐えられないような結果になるわよ」

藤原輝矢は叔母と叔父の命の源だ。もし本当に何かあれば、叔母も叔父も林薫織を許さないだろう。そして従兄については、彼のやり方では、林薫織が一万回死んでも足りないだろう!

林薫織は頭を深く下げた。「申し訳ありません!」

「謝っても何の役にも立たないわ!」

林薫織は医療スタッフについて病院まで行ったが、手術室に入る前にスタッフに外で待つよう止められた。彼女は手術室のドアの上にある表示灯を焦りながら見つめ、熱い鍋の上の蟻のように落ち着かない様子だった。

待っている間、時間は無限に引き伸ばされているように感じた。どれくらい経ったのか分からないが、ようやく手術室のドアが開いた。