第177章 医者、私は大丈夫

氷川泉は今回バリ島に来たのは、インドネシア側と観光開発プロジェクトについて話し合うこと以外に、特に用事はなかった。

実際、このような大きくも小さくもないプロジェクトのために、彼が直接足を運ぶ必要はなかったが、東川秘書はよく分かっていた。社長がバリ島に来た本当の目的は別にあるということを。

彼は機転を利かせて、林薫織の行方を徹底的に調査させ、その詳細を氷川泉に報告した。もちろん、あの小島での出来事については、自動的に無視した。結局のところ、社長がそれを知ったら、喜ばないだろうから。

男はノートパソコンに向かって頭を下げ、キーボードの上で指を素早く動かし、開発案に没頭しているようだった。東川秘書は社長の心中を読み切れなかったが、それでも立ち止まることなく、自分の「ゴシップ」報告を続けた。