第170章 粥を食べさせる

「輝矢、君と林薫織は合わないよ」

藤原輝矢の目が沈んだ。なぜみんな彼と林薫織が合わないと言うのだろう？どうやら、これは彼と林薫織の間の問題であり、他人には関係ないはずだ。

「合うか合わないかは、俺が一番わかっている。姉さん、もし俺が林薫織を絶対に手に入れると言ったら？」藤原輝矢は笑みを浮かべながらも、目には決意が宿っていた。

「輝矢、叔父さんと叔母さんが君と家政婦との関係を認めると思う？」

藤原輝矢の顔の笑みが次第に冷たくなった。「姉さん、これは俺の問題だから、余計な口出しはしないでくれ。親のことは、その時になったら俺が対処する」

「どう対処するつもり？林薫織と隠れて付き合って、既成事実を作るの？でも輝矢、忘れないで、あなたは公人よ。あなたの一挙手一投足はすべてスポットライトの下にさらされる。叔父さんと叔母さんから隠し通せると思う？」

実は、松根がこう指摘しなくても、藤原輝矢は分かっていた。ずっと甘い考えを持っていただけだ。しかし、甘い考えはあくまで甘い考えに過ぎない。今のパパラッチの能力では、彼が林薫織と何かあれば、一ヶ月も経たないうちに隠しきれなくなるだろう。

心の中で千思万考しながらも、藤原輝矢は表面上は不真面目な態度に戻った。「まあまあ、姉さん、俺のことで心配しなくていいよ。自分のことをちゃんと片付けてからにしたら？」

松根がさらに説得しようとした時、林薫織がドアを開けて入ってきた。彼女の手には保温容器があり、中には彼女が作ったばかりの温かいお粥が入っていた。

松根は林薫織を深く見つめ、何か言い残すと出て行った。

林薫織は松根が出て行く時の表情があまり良くないのを見て、思わず藤原輝矢に尋ねた。「藤原さん、松根さんはどうしたんですか？なんだか不機嫌そうでしたが」

「彼女はね、最近失恋したばかりだから、気分が良くないんだよ」藤原輝矢はそう言って話をはぐらかした。

林薫織は半信半疑だったが、それ以上は聞かなかった。結局、それは松根の私事であり、自分には関係ないことだった。