毒が完全に抜けきっていないため、藤原輝矢はさらに二日間入院して経過観察が必要だった。この二日間で、熱心なファンの中には遠方から海を越えてまで駆けつける者もいた。
松根は藤原輝矢が怪我をしており、静養が必要だという理由で、ファンたちを病室の外に追い返したが、芸能界で長年活躍してきた彼女は対応も非常に円滑で、ファンたちの直接の見舞いは断ったものの、藤原輝矢へのプレゼントは全て代わりに受け取った。わずか二日間で、広い病室は花や様々な贈り物の箱でいっぱいになった。
林薫織は部屋中の花を見て、病室の外で首を長くして待っているファンたちのことを思い出し、今時の若い女の子たちがこれほどまでに熱狂的に芸能人を追いかけることを理解できなかった。
しかしよく考えてみると、林薫織も少し理解できた。誰しも若い頃には熱狂的な時期があるものだ。かつて彼女が氷川泉のためにしたことは、これよりもずっと狂気じみていたのだから。
ちょうどそのとき、頭上から突然藤原輝矢の声が聞こえた。「一人でそこに立って何をバカみたいに笑っているんだ?」
笑顔は瞬時に林薫織の顔から消え、目の前に男性の凛とした姿が影を落とし、彼女は少し居心地悪く感じた。無意識のうちに数歩後ずさりし、男性との間に安全な距離を保った。
彼女は顔を上げず、ただ淡々と答えた。「何でもありません。藤原さん、他に用がなければ、私はこれで失礼します。」
藤原輝矢は目を細め、視線を林薫織の小さな顔に固定させ、審査するような目つきだった。
この二日間、林薫織というこの木の実のような頑固者は彼に対する態度がずいぶん冷たくなったようで、まともに目も合わせてくれない。この生意気な女は一体何を企んでいるのだろうか?
藤原輝矢はそれ以上深く追求せず、林薫織に冷たく鼻を鳴らし、半ば怒ったように言った。「帰ればいい。どうせ何かあっても、お前がここにいても役に立たないんだから!」
林薫織は内心苦笑した。藤原輝矢の言うとおりだ。彼女がここにいることは、電灯の邪魔をするように、彼と木村響子の邪魔をするだけで、確かに何の役にも立たない。
「わかりました。」林薫織は小さな声で言い、食事の入った箱を持って、黙って出口へ向かった。