第百五十章 私の問題だ、口を出すな
藤原輝矢は口元に皮肉めいた笑みを浮かべた。「これは俺の問題だ。お前は口を出さない方がいい」
そう言いながら、彼はバーテンダーから受け取ったカクテルを一気に飲み干し、立ち上がって言った。「お前が奢ってくれた酒は飲んだ。用事があるから、先に行くよ」
「輝矢……」牧野天司が彼を呼び止めようとしたが、彼はすでにバーの入り口に向かっていた。天司はため息をつき、ブランデーを一口飲んだ。もはや面白がる気分ではなく、首を振って言った。「相当深みにはまっているな」
ふと彼の視線がカウンターの上の書類の束に落ちた。そこで藤原輝矢が書類を持ち帰るのを忘れたことに気づいた。彼は振り返り、大きな窓越しに広い通りを見たが、そこにはもう藤原輝矢の姿はなかった。