この日、林薫織は洗面所から洗顔を終えて出てきたところ、廊下から騒がしい声が聞こえてきた。彼女は思わず病室のドアを開け、外で何が起きているのか見ようとしたが、ドアの外から突然一つの頭が覗き込んできた。
男性はキャップを被り、サングラスとマスクで顔をしっかりと隠していたが、林薫織はすぐに来訪者が誰なのか分かった。彼女は一瞬固まった後、我に返ってドアを閉めようとしたが、男性は素早く腕を差し入れた。林薫織が手を引く間もなく、男性の腕はドアにしっかりと挟まれてしまった。
彼は痛みに呻いたが、腕を引っ込めることはせず、ただ委託そうな目で林薫織を見つめ、小さな声で言った。「薫織、俺だよ!」
林薫織は彼をじっと見つめ、先ほど自分が強く閉めすぎたせいで本当に彼を痛めつけてしまったかもしれないと思い、一時的に心が和らぎ、彼を中に入れた。