第209章 ごろつき

この日、林薫織は洗面所から洗顔を終えて出てきたところ、廊下から騒がしい声が聞こえてきた。彼女は思わず病室のドアを開け、外で何が起きているのか見ようとしたが、ドアの外から突然一つの頭が覗き込んできた。

男性はキャップを被り、サングラスとマスクで顔をしっかりと隠していたが、林薫織はすぐに来訪者が誰なのか分かった。彼女は一瞬固まった後、我に返ってドアを閉めようとしたが、男性は素早く腕を差し入れた。林薫織が手を引く間もなく、男性の腕はドアにしっかりと挟まれてしまった。

彼は痛みに呻いたが、腕を引っ込めることはせず、ただ委託そうな目で林薫織を見つめ、小さな声で言った。「薫織、俺だよ!」

林薫織は彼をじっと見つめ、先ほど自分が強く閉めすぎたせいで本当に彼を痛めつけてしまったかもしれないと思い、一時的に心が和らぎ、彼を中に入れた。

「ここで何をしているの?」林薫織は冷たく尋ねた。

藤原輝矢はサングラスとマスクを外し、にっこり笑って言った。「君が恋しくなって、来たんだ。」

林薫織は藤原輝矢がこんなに率直に話すとは思ってもみなかった。幸い、病室のもう一人の患者は昨日退院し、母親も看護師に連れられて臨時検査に行っていたので、さもなければどれほどの問題が起きていたか分からない。

「藤原さん、もう言ったでしょう。私たちは合わないって。」

「合うか合わないかは君が決めることじゃない。」藤原輝矢は一気に林薫織の肩を抱き、彼女を自分の胸に引き寄せ、突然彼女に顔を近づけて笑いながら言った。「俺から見れば、俺たちはとても合っている。」

「藤原輝矢、あなた…」林薫織は口を開いたが、何を言えばいいのか分からなかった。

「何が『あなた』だよ、反論の言葉も思いつかないなんて、本当にバカだな!」藤原輝矢は愛情を込めて彼女の鼻先をつついた後、軽く咳払いをして真面目な表情で言った。「林薫織、今日から俺、藤原輝矢は正式に君を追いかける。急いで断る必要はない。なぜなら、追いかけるかどうかは俺の自由で、君には干渉する権利がない。受け入れるかどうかは君の問題だ。」

そう言うと、藤原輝矢は彼女の額に深いキスをし、すぐに彼女を放して、再び完全武装して病室から抜け出した。