林薫織は藤原輝矢を睨みつけたが、仕方なく手を伸ばして青バラを受け取った。藤原輝矢のあの顔は人を引き寄せすぎる。彼女の生活はようやく平穏を取り戻したところで、もう大きな波風を立てられたくなかった。
脅しが効いたことに、藤原輝矢は得意げに笑い、林薫織の肩を抱き寄せて病室の方向へ歩き出した。林薫織は当然不満だった。林の母が今病室にいるのだ。もし林の母が藤原輝矢の存在を知ったら、どれだけ面倒なことになるか分からない。
「藤原輝矢、何か用があるなら、ここで話せばいいじゃない」
「本当にここで話したいの?」藤原輝矢は目を細め、意味ありげに彼女を見た。
林薫織は藤原輝矢に見つめられて背筋が凍りつき、仕方なく小声で言った。「藤原輝矢、そんな態度を取らないでくれない?」
藤原輝矢は目を細め、一瞬冷たい光が目の奥を過ったが、すぐに消え、にやにや笑いながら言った。「どんな態度?今の私が怖いの?勘違いしないでよ。今日ここに来たのはあなたのためじゃない。伯母さんに会いに来たんだ」
林薫織は一瞬呆然とした。藤原輝矢が病院に来たのは母親に会うためだというのか?
林薫織が疑わしげに自分を見つめているのを見て、藤原輝矢は手に持った栄養剤を林薫織の目の前に掲げた。「ほら、見て、嘘じゃないでしょ?」
そう言うと、藤原輝矢は林薫織を押しのけ、振り返って林の母がいる病室に入った。
前回林の母が発作を起こした時、藤原輝矢は手配を手伝ってくれたが、その時林の母はずっと意識不明で、藤原輝矢本人には会っていなかった。だから林の母が藤原輝矢が栄養剤を持って病室に入ってきたのを見たとき、驚きを隠せなかった。
「あなたは...」
「こんにちは、伯母さん!薫織の友達です。伯母さんが病気で入院されたと聞いて、今日たまたまこの近くを通りかかったので、寄らせていただきました。初めてお会いするので、何が必要か分からなかったのですが、少し栄養剤を買ってきました。伯母さんが早く回復されることを願っています」
……
藤原輝矢という人物は普段は傲慢で横柄だが、人を喜ばせる才能は一流だった。3歳の子供から80歳のお年寄りまで、彼が気に入れば、誰でも彼の熱心な「ファン」にすることができた。