時間は二人の戯れの中であっという間に過ぎ去り、すぐに夜になった。アパートには食材がほとんどなく、夕食は出前で済ませるしかなかった。
食事の後、藤原輝矢は目立たない黒いセダンに乗り換え、林薫織を病院まで送った。不必要なトラブルを避けるため、林薫織は彼に車から降りるよう頼まなかった。
林の母の主治医の診察室の前を通りかかったとき、ちょうど主治医が部屋から出てくるところに出くわした。林薫織が挨拶をすると、医師に呼び止められた。
「林さん、私の診察室にちょっと来てください。重要な話があります」
林薫織は少し躊躇したが、結局彼について診察室に入った。主治医は自分の席に座り、コンピューターを開いて、ある患者の資料を取り出した。
「林さん、良い知らせがあります。お母様と適合する腎臓ドナーが見つかりました」