第230章 条件、私の元に戻れ

翌日、林薫織はセイント病院へ行ってその患者を見つけたが、患者はすでに重度の昏睡状態に陥っていた。そして患者の家族は、林薫織がどれほど懇願しても、腎臓の提供に同意してくれなかった。

セイント病院を出るとき、林薫織は病院の入り口で氷川泉と出くわした。冷たい風の中、男の髪は少し乱れ、服装もいつものようにきちんとしておらず、急いで駆けつけたようだった。

林薫織は彼と関わりたくなかったので、身をよけて彼を避けようとしたが、すれ違う瞬間、男の冷たい声が背後から聞こえてきた。

「患者の家族を説得するのを手伝ってあげられるよ」

林薫織は足を止め、振り返って男を見た。彼は唇の端に冷ややかな笑みを浮かべ、薄い唇を開いて言った。「ただし、条件がある」

「どんな条件?」

「私のもとに戻ってくること」