第276章 ここで君を抱いたとして、それがどうした?

携帯電話とSIMカードを手に入れた藤原輝矢は、最初の電話をやはり林薫織にかけたが、結果は同じだった。林薫織の携帯電話はずっと電源が切られたままだった。すぐに、彼は牧野天司に電話をかけた。

「兄弟、お前の電話はタイミングがいいな。ちょうど伝えようと思っていたことがある。前に調べてくれと頼んだことだが、もう調べ終わった。ただ……」

「ただ何だ?」

「結果はお前が望むものではないかもしれない。本当に知りたいのか?」

「言いたいことがあるなら言え。俺は足に怪我をしたが、神経は脆くなっていない」

「それならいい。私の部下から送られてきた情報によると、先日、林薫織の母親がセイント病院に転院された。最近、薫織は日中ほとんどセイント病院にいて、毎日午後6時になると、セイント病院の入り口で黒い車に迎えられるという」