第255章 取引（11）

思い直して、林薫織は頷いた。「わかりました、あなたの言う通りにします。」

「では、私はすぐにセンター病院へ行って林夫人の退院手続きをします。林さん、他に荷物はありませんか？一緒にこちらへ運びましょう。」

林薫織は首を振った。彼女の持ち物は元の場所に置いておけばいい。彼女はここに一生住むわけではなく、いずれは去るのだから、余計な手間をかける必要はなかった。

「一緒に行きます。」一晩離れていて、彼女は母親のことが心配だった。

林薫織が喜んだのは、病院に戻ったとき、林の母はすでに目を覚ましていたことだった。林薫織が戻ってくるのを見て、付き添いのおばさんは嬉しそうに言った。「ほら、噂をすれば影。お母さんがちょうどあなたのことを尋ねていたのよ。電話をかけても電源が切れていて、私もお母さんも心配していたの。ほら、戻ってきたじゃない。」

林薫織は数歩駆け寄り、林の母をしっかりと抱きしめ、小さな声で言った。「お母さん、ごめんなさい、心配させて。でも、良い知らせがあるの。お母さんと適合する腎臓が見つかったの。セイント病院の患者さんが臓器提供の同意書にサインしてくれたわ。すぐにお母さんは良くなるわ。」

「昨夜出かけたのは、そのためだったの？」付き添いのおばさんが尋ねた。

林薫織はためらった後、頷いた。まあ、そういうことになる。

林の母は目を上げて林薫織を見つめ、彼女の目の下のクマに視線を落とした。彼女が意識を失っている間、林薫織が彼女のために東奔西走し、心身を疲れ果てていたことは想像に難くなかった。

彼女は思わず心痛めながら林薫織の痩せた頬に手を当てた。「薫織、お母さんがあなたを苦しめてしまったわね。お母さんは役立たずで、あなたの足手まといになるばかり。」

「何言ってるの、私はお母さんの娘だもの、全部私がするべきことよ。今、腎臓が見つかったんだから、すぐに良くなるわ。そしてもうすぐお父さんも帰ってくる。そうしたら私たち家族みんなで賑やかに過ごせるわ。」家族が再会し、みんなが健康でいること、それが今の林薫織の最大の夢だった。

林の母は目覚めた状態が良さそうで、お粥を一杯全部食べ、おかずも少し食べた。