「ほら、見て、契約書にはすべてサインしたわ、信じられないなら見てみて」そう言って、林薫織は東川秘書が前もって彼女のために用意した契約書を林の母の前に差し出した。
林の母は契約書にあるセイント病院の公印を見て、思わず目に涙を浮かべた。「薫織、これで私たちの苦しい日々も終わりが見えてきたわね」
林薫織は口元を緩めた。「そうよ、お母さん、あなたが幸せに暮らせる日々はこれからよ」
林の母の転院手続きを済ませた林薫織は、長い間迷った末、ついに携帯を取り出し、藤原輝矢に電話をかけ直すことにした。逃げても解決できないことがある。結果が出ないと分かっているなら、思い切って断ち切った方が、傷も最小限に抑えられる。
「申し訳ありません、お掛けになった電話は現在つながりません。後ほどおかけ直しください。申し訳ありません、お掛けになった電話は現在つながりません。後ほどおかけ直しください。申し訳ありません...」