「はい、ありがとうございます」林薫織は看護師にお礼を言いながらも、エレベーターの方へ歩いていった。
看護師は彼女の後ろ姿を見て首を振った。また一人「諦めきれない」ファンか。でも、このファンの姿はどこか見覚えがある気がした。どこかで見たことがあるような気がしたが、思い出せなかった。
案の定、看護師が言った通り、林薫織はエレベーターを出るとすぐに、廊下に立っていた黒いスーツを着た二人のボディーガードに止められた。「申し訳ありませんが、お嬢さん、先へは進めません」
「私は...私は藤原輝矢の友人です」
ボディーガードは林薫織を上から下まで観察し、脇に置いてあった写真帳を取り出して一通り確認した後、首を振った。「申し訳ありません、お嬢さん。あなたはこのリストに載っていません。お引き取りください」