第215章 放縦

階下に降りると、林薫織は一人でリビングに座り、テレビをつけて何度もチャンネルを変えていたが、何も目に入らなかった。酔った氷川泉の眼差しが彼女の脳裏に焼き付いたように、どうしても消えなかった。

彼女は全身の重みを背後の本革ソファに預け、ゆっくりと目を閉じて思考に沈んだ。最近起きた様々な出来事を整理しようとしたが、もつれた糸のように解けず、事態はますます複雑になっていくように思えた。

彼女はゆっくりと右頬の長い傷跡に手を伸ばし、唇の端に苦笑いを浮かべた。氷川泉がどんな動機でそうしたにせよ、彼女は決して許すことはないだろう。

……

「一夜宿泊事件」以来、藤原輝矢と木村響子の関係はさらに謎めいたものになっていた。

人々は困惑せずにはいられなかった。つい先日まで藤原輝矢は記者会見で別の女性に公開告白していたのに、どうして一ヶ月ちょっとで再び木村響子と複雑な関係になっているのか。

「なぜって、藤原輝矢は蒸し返そうとしているんでしょ」と通行人Aは言った。

「でも、私が見る限り、藤原輝矢はあの林…林何だっけ、に対して誠実そうだったけど」と通行人Bは言った。

「誠実も何も、芸能界で長続きする恋愛を見たことある?この世界の人たちは乱れてるよ。今日はこの人と良い関係で、明日はあの人と何かあって、それが当たり前のことじゃない」と通行人Aは言った。

通行人Cは思わず嘆いた。「この上流社会は、本当に下品だね!」

「そうだよ、お金持ちほど底なしで、特にお金があって教養のない人たちはね。ちょうど、ほとんどの芸能人がそうだ。それに藤原輝矢の浮気性は誰でも知ってる。おそらく木村響子としばらく付き合っても、またすぐ別れるだろうね」と通行人Aは言った。

「うん、もっともだ、もっとも」と通行人Bは言った。「まあ、他人のことはやめにして、食事にしよう、食事」

当事者である藤原輝矢は、メディアの報道に対して公に釈明することはなかった。他人から見れば、彼の沈黙は暗黙の了解に等しかった。

スキャンダルを抱えながらも、彼は相変わらず我が道を行き、T市の様々な歓楽街に頻繁に姿を現し、かつての奔放な姿に戻ったかのようだった。