第215章 放縦

階下に降りると、林薫織は一人でリビングに座り、テレビをつけて何度もチャンネルを変えていたが、何も目に入らなかった。酔った氷川泉の眼差しが彼女の脳裏に焼き付いたように、どうしても消えなかった。

彼女は全身の重みを背後の本革ソファに預け、ゆっくりと目を閉じて思考に沈んだ。最近起きた様々な出来事を整理しようとしたが、もつれた糸のように解けず、事態はますます複雑になっていくように思えた。

彼女はゆっくりと右頬の長い傷跡に手を伸ばし、唇の端に苦笑いを浮かべた。氷川泉がどんな動機でそうしたにせよ、彼女は決して許すことはないだろう。

……

「一夜宿泊事件」以来、藤原輝矢と木村響子の関係はさらに謎めいたものになっていた。

人々は困惑せずにはいられなかった。つい先日まで藤原輝矢は記者会見で別の女性に公開告白していたのに、どうして一ヶ月ちょっとで再び木村響子と複雑な関係になっているのか。