電話の向こうからなかなか返事がないのを見て、東川秘書はすぐに雰囲気がおかしいと感じた。もしかして上手くいかなかったのか?そんなはずはない。良い時間と場所、イケメンと美女なら、この手は他の人なら確実に成功するはずだ。
彼が困惑していると、氷川泉の冷たい声が電話の向こうから聞こえてきた。「林薫織を半坂別荘に迎えに行ってくれ」
What?Now?
「あの、社長、今デートの最中なんですが、贺集さんに林さんを迎えに行ってもらうことはできませんか?」
「贺集は実家に帰っていて、T市にいない」
つまり社長は彼を臨時の使いっ走りにするつもりなのか?東川秘書は不満げに隣の彼女を見やり、これ以上ないほど悲惨だと感じた。氷川財団の給料が良くなければ、本当に意地を張って辞めたいところだった。
まあ、仕方ない。給料のためにも我慢しよう。「あの、社長、林さんは今どこにいるんですか?」