男性の包帯を巻く動作はかなり手慣れていて、すぐに林薫織の膝の傷をきちんと包帯で覆った。
階段を上がる時、林薫織は自分で歩くと主張し、氷川泉は彼女を止めなかった。しかし、二人がベッドに横になった時、男性は腕を回して林薫織をしっかりと抱き寄せた。
林薫織は心臓の鼓動が一瞬止まり、全身が緊張した。彼女は男性が何か過激な行動に出るかと思ったが、氷川泉はそれ以上何もせず、ただ純粋に彼女を抱きしめているだけだった。
氷川泉に抱かれていると、林薫織はまったく眠気がなくなった。彼女は氷川泉が眠るのを待って、彼の腕から抜け出そうと考えていた。
男性は彼女の考えを察したようで、手を伸ばし、長い指で彼女の目を覆い、低い声で言った。「眠りなさい」
林薫織は少し驚いた。これほど長い時間が経っても、氷川泉はまだ眠っていなかったのだ。仕方なく、彼女は目を閉じ、自分を催眠にかけようとした。人は不眠の時に羊を数えると効果があると言うが、林薫織にとってはこの方法はまったく役に立たないことがわかった。