男性の包帯を巻く動作はかなり手慣れていて、すぐに林薫織の膝の傷をきちんと包帯で覆った。
階段を上がる時、林薫織は自分で歩くと主張し、氷川泉は彼女を止めなかった。しかし、二人がベッドに横になった時、男性は腕を回して林薫織をしっかりと抱き寄せた。
林薫織は心臓の鼓動が一瞬止まり、全身が緊張した。彼女は男性が何か過激な行動に出るかと思ったが、氷川泉はそれ以上何もせず、ただ純粋に彼女を抱きしめているだけだった。
氷川泉に抱かれていると、林薫織はまったく眠気がなくなった。彼女は氷川泉が眠るのを待って、彼の腕から抜け出そうと考えていた。
男性は彼女の考えを察したようで、手を伸ばし、長い指で彼女の目を覆い、低い声で言った。「眠りなさい」
林薫織は少し驚いた。これほど長い時間が経っても、氷川泉はまだ眠っていなかったのだ。仕方なく、彼女は目を閉じ、自分を催眠にかけようとした。人は不眠の時に羊を数えると効果があると言うが、林薫織にとってはこの方法はまったく役に立たないことがわかった。
東の空が白み始めても、林薫織はまだ眠れずにいた。隣のマットレスが突然動き、衣擦れの音が聞こえた。おそらく氷川泉は会社に行くつもりなのだろう。
林薫織は心が少し軽くなり、後でもう少し眠ろうと思った。さもないと午後の仕事が続けられないだろう。そのとき、林薫織は周囲の空気が動くのを感じ、続いて男性の温かい息遣いを感じた。
それは氷川泉の息だった。
林薫織は布団の下で指が少し震えたが、表情は変えず、依然として眠っているふりをしていた。彼女は氷川泉が何をしようとしているのか分からなかったが、次の瞬間にその答えを得た。
林薫織は氷川泉がこのような行動をとるとは思いもよらなかった。彼女にとって、このような親密な行為は深く愛し合っている恋人同士だけがするものだった。しかし彼らは恋人ではなく、氷川泉が彼女を愛しているとは言えなかった。
彼女のまつげが蝶の羽のように震えているのを見て、男性は彼女の演技を暴くことなく、彼女を深く見つめ、ゆっくりと身を起こし、ドアの方へ歩いていった。
階下に降りると、男性は暁美さんに言った。「林さんはもう少し眠るから、起こさないでくれ」
暁美さんは急いでうなずいた。「はい、わかりました」