第300章 氷川泉と一緒に海外へ?

藤原哲男は林薫織から藤原輝矢の居場所を聞き出せなかったが、自分が求めていた答えは得られた。

T市で、藤原夫人は一時的に小さな洋館を購入していた。藤原哲男の車が別荘に入ると、藤原夫人がすぐに迎えに出てきた。「どうだった?弟は見つかった?」

藤原哲男が首を横に振るのを見て、藤原夫人は焦りのあまり、いつもの落ち着きや威厳も忘れて泣き出した。「まだ見つからないの?あの子はまだ怪我が治っていないし、足も不自由なのよ。外で何かあったらどうするの!」

「母さん、輝矢はもう大人だから、大丈夫だよ」

「どうして大丈夫なの?怪我をしているし、ボディガードも連れていないのよ。今は熱狂的なファンもたくさんいるし、あんな狂ったファンたちは何をするか分からないわ」

藤原哲男は人を慰めるのが苦手だったので、藤原夫人の後ろにいる松根に目配せした。松根はそれを見て、急いで慰めに入った。「おばさま、そんなに深刻に考えないでください。今のファンは昔より民度が高いですよ。それに、輝矢はまだ怪我をしているので、一人ではあれだけのボディガードの目を逃れて逃げることはできません。きっと誰かが手伝ったはずです。つまり、彼は一人じゃないんです。今頃はどこかの友人の家にいるかもしれませんよ」

藤原夫人はそれを聞いて少し納得したようで、半信半疑で「本当?」と尋ねた。

「私がいつ嘘をついたことがありますか?」

そのとき、藤原哲男が重々しく言った。「母さん、心配しないで。数日もすれば、輝矢は戻ってくるよ」

「どうしてそれが分かるの?もし戻ってこなかったらどうするの?」

「おばさま、いとこの言葉を信じられないんですか?」松根は藤原哲男のことをよく理解していた。「いとこがそう言うからには、絶対の自信があるはずです」

子を知るは母に如かず、藤原夫人は当然、藤原哲男のことを理解していた。ただ、心配のあまり冷静さを失っていて、まだ安心できなかった。

「おばさま、ほら、もう一日中ろくに食事もしていないじゃないですか。輝矢のことにも目処がついたんですから、まずは何か食べましょう。そうしないと輝矢が戻ってきたとき、あなたの体調が悪くなっていたら、今度は輝矢が悲しむことになりますよ」

「あの薄情な小僧、私のことなんか気にするわけないわ」