第367章 この体を持っていけばいい!

楽しい時間はいつも過ぎるのが早すぎる。串焼きを食べ終わると、二人はついに別れた。半坂別荘に戻ると、氷川泉はリビングでビジネスニュースを見ていた。

足音を聞いて、男は振り返って彼女を見た。男の視線がショッピングバッグに触れた瞬間、冷たい顔が一瞬柔らかくなった。

「帰ってきたか?」

「うん」

林薫織はまだ近づかず、ショッピングバッグの中身を氷川泉に差し出した。「ほら、あなたが欲しがっていた財布。どんなブランドが好きか分からなかったから、これが気に入らなかったら使わなくていいわ」

「誰が気に入らないと言った?」

男は手を伸ばしてショッピングバッグを受け取り、財布を取り出して口元を緩めた。そしてソファの鞄から古いキャメル色の財布を取り出し、二つの財布を林薫織に渡した。

林薫織はキャメル色の財布を見た瞬間、どこかで見覚えがあると感じ、そして5年前に自分が氷川泉に買ってあげたものだと思い出した。