第236章 彼の緊張

「私も一緒に行きましょう、何かあったときのために」暁美さんが提案した。

男性は頷いた。

暁美さんは男性が慌ただしく車庫に向かって歩いていくのを見て、パジャマとスリッパのままで着替える時間もなかったことに心の中で驚いた。もし一人の女性が、いつも冷静で自制心があり、几帳面な男性をこれほど慌てさせることができるなら、それは一つのことを物語っている。

林さんは氷川さんの心の中で軽くない存在なのだ。

T市の天気は変わりやすく、途中で雨が降り始めた。あいにく、病院まであと数百メートルのところで、前方で事故が起きて渋滞が発生していた。

男性は副席の林薫織を見やると、彼女が痛みで冷や汗を流し、唇が震えているのが見えた。眉をひそめる。男性の長い指が絶えずハンドルを叩き、細い目でフロントガラス越しに前方を見ると、前は完全に詰まっていた。普段なら泰山が崩れても色を変えない彼の端正な顔に、焦りと心配が隠せなかった。