第427章 林薫織、愛している

半坂別荘の広々としたリビングルームに、時報の音が再び鳴り響いた。夜は更けていたが、男はまだじっとソファに座ったままだった。彼の指の間にはタバコが挟まれ、テーブルの上の灰皿にはすでに吸い殻が山積みになっていた。

男は背中を少し丸め、後ろの革張りのソファに寄りかかっていた。彼の視線は下を向き、目の前の灰皿に落ちているようでいて、そうでもないようだった。時折、手にしたタバコを深く吸い込み、煙を吐き出す間も、眉間はずっと緩むことなく、何かを考え込んでいるようだった。

そうしてどれくらい時間が経ったのか、彼は突然顔を上げ、暁美さんが自分から少し離れたところに立ち、両手をもじもじさせながら、緊張した表情で何か言いたげな様子でいるのに気づいた。

男は指の間のタバコの灰を確かめ、低い声で言った。「暁美さん、先に寝てください」