第426章 この女は毒薬だ

半坂別荘を離れてから、藤原輝矢は二度と林薫織を訪ねることはなかった。彼は、自分が何をしようとも、林薫織が彼と一緒になることはもうないということをよく理解していた。

彼女があのように決然とした態度で彼を拒絶したのは、彼女が彼を愛していないからではなく、彼のことを深く思いやっていたからだ。時に人生はこれほど残酷で、これほど滑稽なものだ。互いに深く愛し合っている二人が、一緒になれないなんて。

彼は恋愛において常に勝利を収めてきた自分が、いつの日かこれほど大きな挫折を味わうことになるとは思ってもみなかった。これほど痛みを伴う挫折を。

最初の数日間、彼は林薫織を完全に失ったという事実を受け入れることができず、ほぼ毎日泥酔するまで酒を飲み、毎朝目覚めるたびに、なぜ自分がまだ生きているのかと激しく自分を憎んだ。

しばらく自暴自棄になった後、彼は受け入れることを学び始め、以前のように広告の撮影をし、コンサートを開き、リアリティショーに出演するようになった。彼は自分に言い聞かせた。ほら見ろ、林薫織がいなくても、藤原輝矢は元気に生きていける。

ただ、心の奥底のある一角に大きな穴が開いていて、どんなに縫い合わせようとしても、心の空虚さを埋めることはできなかった。

彼はその穴がいつ埋まるのか分からなかったが、卑屈にも、一生埋まらないでほしいと思っていた。そうすれば少なくとも、彼の心の奥底には林薫織の場所が残る。彼を深く傷つけたあの女性の場所が。

この数日間、藤原輝矢は全国各地を飛び回り、ほとんど足を地につける暇もなかった。アパートのドアを開けると、藤原輝矢の視線は無意識のうちにリビングルームを一周し、ソファとテーブルとテレビ以外に誰もいない空っぽのリビングを見て、男の瞳は暗くなった。

この部屋には、もうあの小さくて忙しそうな姿はいない。

彼は苦々しく口角を引きつらせた。こんなに経っても、なぜこの習慣を直せないのだろう?

あの女は本当に恐ろしい、まるで毒のように、あらゆる隙間から、常に彼の頭の中に侵入し、彼の理性を蝕んでいく。

……

真夜中の12時の鐘の音が半坂別荘のリビングに響き渡る中、暁美さんは顔に不安を隠せず、心は熱い鍋の中のアリのようだった。こんな遅くなっても、林さんはまだ帰ってこない。