第449章 この女は毒がある

暁美さんは急いで救急箱を取りに行き、林薫織は氷川泉の右手をちらりと見ただけで、スリッパを履いたまま階段を上がり、夕食の時間になっても降りてこなかった。

食卓では、男の右手は包帯で巻かれていたが、なかなか箸を取ろうとしなかった。暁美さんはそれを見て、彼が林薫織を待っていることを知り、心中複雑な思いを抱いた。彼女はすでに二度も階上に行ったが、いずれも無駄足だった。林薫織の性格からして、おそらくこの夕食は下りてこないだろう。

「旦那様、後ほど夕食を階上にお持ちしましょうか」

「彼女に持っていく必要があるのか?食べたくないなら、食べなくていい!」

「それは……」暁美さんは氷川泉の冷たい表情を見て、一瞬躊躇したが、それでも我慢できずに言葉を続けた。「旦那様、林さんは今、身重です。食事をしないのは大人なら耐えられるかもしれませんが、お腹の子にはよくありません。子供はまだ小さく、栄養が必要で無理はできないのです」