暁美さんが電話を終えて戻ってくると、病室には誰もいなくなっていた。彼女は林薫織がトイレに行ったのだろうと思い、しばらくドアをノックしたが、中からの返事はなかった。
「林さん?林さん?」
暁美さんは突然不吉な予感がして、ドアノブを回してトイレのドアを開けると、中は空っぽで、林薫織の姿はどこにもなかった。
彼女はすぐに事態が良くないと感じ、すぐに氷川泉に電話をかけた。電話がかかってきた時、氷川泉はちょうど警察署に向かう途中だった。警察側は明日になってから結果が出ると言っていたが、彼はもう待てなかった。
「何だって?林薫織が見当たらないだって?!」
耳障りなブレーキ音とともに、黒いSUVが道路の真ん中に急停止した。幸い周囲の車は少なかったので、悲惨な事故になる可能性は低かった。