460章 氷川泉、手を離せ!

偶然なのか、展望台の片隅に、柵が一部壊れて隙間ができていた。長い間修理されず、ちょうど一人が通り抜けられるほどの大きさだった。

林薫織はその壊れた柵を見つめ、まるで地獄への入り口を見るかのようだった。彼女は自嘲気味に笑った。これまで神様は彼女に敵対し、何の恵みも与えてくれなかったのに、今回はわざわざ彼女のために道を開いてくれた。死ぬ間際になって、ようやく神様は彼女の味方になり、大した労力なく簡単に死へと向かえるようにしてくれたのだ。

先ほどいた場所から展望台の端まではわずか十数メートルの距離で、一分もかからずに林薫織は展望台の端に到着した。

今夜は月も星もなく、空は灰色に霞んでいた。まるで巨大な黒い鍋蓋が頭上を覆い、息苦しさを感じさせた。周囲には冷たい灯りの他には何もなかった。